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岐阜地方裁判所 昭和37年(わ)204号 判決

本店の所在地

各務原市成清町六二六番地の一

酒井産業株式会社

右代表者代表取締役

酒井正男

本籍および住居

各務原市成清町六二六番地の一

会社社長

酒井正男

大正一二年三月三日生

右酒井産業株式会社および酒井正男に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官樋田誠出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告会社を第一の罪につき罰金一五〇万円に、第二の罪につき罰金三〇万円に、第三の罪につき罰金一四〇万円に処する。

被告人酒井正男を懲役六月に処する。

被告人酒井正男に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用は全部被告人酒井正男の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社酒井産業株式会社(以下、単に被告会社という。)は絹、人絹織物および毛織物の卸売を業とする法人であるが、その前身は被告人酒井正男(以下、単に被告人という。)が実父酒井一政と共に昭和二四年一〇月から開始した人絹織物の卸売を目的とする個人営業であつて、それが継続発展し、被告人、前記一政および被告人の実弟酒井三郎の共同出資で合名会社組織とし、同二五年六月一日その旨の登記がされ、更に同二八年一一月一一日酒井産業株式会社として設立登記されたもの。

被告人は被告会社設立当初からその取締役(代表取締役は一政)として被告会社の業務全般の衝に当り、一政の死去に伴い同三五年七月一日代表取締役となつてからは、名実共に被告会社の経営一切を総括指揮していたものであるが、被告人は被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、期末商品の削減、架空仕入または架空経費の計上もしくは売上の除外を行ない収益の一部を秘匿する等の不正な行為により、

第一、昭和三三年六月一日から同三四年五月三一日までの事業年度における被告会社の所得金額は金一、六七七万七、二七三円で、その法人税額は金六二七万五、三三〇円であつたにも拘らず、同三四年七月三一日、所轄の岐阜市加納水野町四丁目二二番地所在岐阜南税務署において同税務署長に対し、所得金額が金三六二万四、九二七円で、その法人税額は金一二七万七、四六〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、よつて被告会社の同事業年度における正規の法人税額のうち金四九九万七、八七〇円を逋脱し、

第二、同三四年六月一日から同三五年五月三一日までの事業年度における被告会社の所得金額は金六三八万四、七〇四円で、その法人税額は金二三二万六、一八〇円であつたにも拘らず、同三五年八月一日、右所轄税務署において同税務署長に対し、所得金額が金三〇二万二、〇四五円で、その法人税額は金一〇四万八、三六〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、よつて被告会社の同事業年度における正規の法人税額のうち金一二七万七、八二〇円を逋脱し、

第三、同三五年六月一日から同三六年五月三一日までの事業年度における被告会社の所得金額は金一、六四一万八、四五一円で、その法人税額は金六〇三万九、六二〇円であつたにも拘らず、同三六年七月三一日、右所轄税務署において同税務署長に対し、所得金額が金四四五万一、一九二円で、その法人税額は金一四九万二、〇五〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、よつて被告会社の同事業年度における正規の法人税額のうち金四五四万七、五七〇円を逋脱したものである。

(証拠の標目)

第一、判示冒頭の事実および被告会社が判示第一ないし第三の各年度の所得金額および法人税額に関し、判示の如く各申告をした事実について、

一、第一回公判調書中の被告人の供述部分

一、被告人の検察官に対する第一回供述調書(検察官請求証拠標目書番号138。以下、単に番号のみで示す。)

一、岐阜南税務署長作成の証明書三通(いずれも署長名自署のもの。6ないし8)

一、岐阜地方法務局法務事務官作成の商業登記簿謄本(1)

第二、別紙一(判示第一事実関係)犯則所得貸借対照表の各項目について

(イ)、現金について

一、被告人の検察官に対する第一回(138)および第四回(141)各供述調書

一、第四回公判調書中の証人酒井美節子の供述部分

一、第二四回公判調書中の証人真野一郎の供述部分

(ロ)、銀行預金について

一、被告人の検察官に対する第二回供述調書(139)

一、大垣共立銀行那加支店長作成の昭和三六年一一月八日付(10および13(西山将男名義部分))および同月一〇日付(11)各「預金元帳原本写」

一、同銀行笠松支店長作成の「定期預金元帳写」(定期預金明細)(29)

一、岐阜信用金庫切通支店長作成の「定期預金元帳写」(定期預金明細)(12)

(ハ)、有価証券について

一、被告人の検察官に対する第二回供述調書(139)

一、第二六回公判調書中の証人真野一郎の供述部分

一、大垣共立銀行那加支店長作成の同月八日付(表紙に丁番号738と記してあるもの)「預金元帳原本写」中の西山将男名義部分(13)

一、同銀行同支店為替係作成の「送金為替手形記入帳」(39)

一、麒麟麦酒株式会社株式課長(30)および名古屋精糖株式課長(33)作成の各「回答書」

一、新三菱重工業株式会社経理部株式課長作成の「回答書送付御案内の件」と題する書面(31)

一、東洋信託銀行株式会社証券代行部作成の頭書が「今般ご照会の、、、、」で始まる文書(32)

一、大蔵事務官作成の「現金、有価証券等現在高確認書」(34)

一、毛利堅次作成の同年九月二八日付(35)および同年一〇月二〇日付(36)各「上申書」

一、押収してあるノート二冊(昭和四〇年押第三号の九および一〇)

(ニ)、貸付金について

一、被告人の検察官に対する第二回供述調書(139)

一、小村かずゑ作成の上申書(22)

(ホ)、商品について

一、田中徳光の検察官に対する第一回供述調書(14)

一、岐阜南税務署長作成の「証明書」(同三四年七月三一日に申告した分)(6)

一、押収してある「約定現品差引帳」一綴(同押号の一)(15)、「連絡日報第五号」一冊(同押号の二)(16)、「在庫メモ」一綴(同押号の三)(17)、「仕入帳」二冊(自34.6.1至35.5.31(同押号の四)(18)および自35.6.1至36.5.31(同押号の五)(19))、「商品出入伝票綴」一冊(同押号の六)(20)および「商品出納長」一冊(同押号の七)(21)

(ヘ)、架空支払手形について

一、被告人の検察官に対する第二回供述調書(139)

一、酒井三郎の検察官に対する供述調書(23)

一、滋賀銀行京都支店次長作成の「普通預金元帳写」(「普通預金宇山安三取引明細写」および「宇山安三名義普通預金中切手、代手の明細」と題する書面(25)

一、大垣共立銀行那加支店長作成の同三六年一二月七日付「預金元帳原本写」(26)

一、押収してある「手形受払帳」二冊((33.5月期)(同押号の八)(24)および(34.5月期)(押号の一一)(40))

(ト)、仮受金について

一、被告人の検察官に対する第一回(138)および第四回(141)各供述調書

一、第二四回ないし第二六回公判調書中の証人真野一郎の各供述部分

一、大垣共立銀行那加支店長作成の同三六年一二月七日付「預金元帳原本写」(26)

一、岐阜南税務署長作成の証明書(同二九年一月一七日に申告した分)(署長名ゴム印で刻印のもの)(27)

一、大垣共立銀行那加支店作成の「商業手形残高証明書」(28)

(チ)、個人仮受金について

一、被告人の検察官に対する第一回ないし第三回各供述調書(138ないし140)

一、第二六回公判調書中の証人真野一郎の供述部分

一、酒井三郎(23)および田中徳光(第二回)(45)の検察官に対する各供述調書

一、大垣共立銀行那加支店長作成の同三六年一一月一〇日付「預金元帳原本写」(11)

一、同支店長作成の同月八日付(表紙に丁番号738と記してあるもの)「預金元帳原本写」中の西山将男(13)、酒井一政(42)、酒井正男(66)、酒井三郎(67)各名義部分および「定期積金元帳」の写(酒井美節子名義部分)(68)

一、滋賀銀行京都支店次長作成の「普通金元帳写」(「普通預金宇山安三取引明細写」および「宇山安三名義普通預金中切手、代手の明細」と題する書面(25)

一、大垣共立銀行那加支店為替係作成の「送金為替手形記入帳元本写」(39)

一、岐阜信用金庫笠松支店次長作成の「定期預金元帳写」(43)

一、滋賀銀行京都支店次長作成の「普通預金元帳写」(「普通預金元帳原簿写」および「酒井三郎名義普通預金入金中切手代手の明細」と題する書面)(47)

一、株式会社大和銀行京都支店長作成の「普通預金元帳写」(69)

一、滋賀銀行京都支店長代理作成の「定期預金明細」(73)

一、同代理作成の「定期積金」と表題の付してある書面(酒田実名義)(74)

一、麒麟麦酒株式会社株式課長(30)、愛知製鋼株式会社庶務課付西河竜之進(54)、大垣共立銀行庶務課長(55)、関西電力株式会社株式課副長(56)、岐阜土地興業株式会社庶務課長(57)、昭和鉱業株式会社株式課長(58)、十六銀行文書課長代理(59)、中部電力株式会社株式課長(60)、東京電力株式会社株式課越後一郎(61)、東洋レーヨン株式会社総務部株式課長(62)、名古屋鉄道株式会社株式課長、(63)および平和不動産株式会社株式課長(64)作成名「回答書」

一、滋賀銀行京都支店森田辰雄作成の「御照の件について御回答」と題する書面(48)

一、大和証券株式会社京都支店長作成の「投資信託収益分配金に関する回答」と題する書面(65)

一、毛利堅次(二通)((同年九月二八日付)(35)および(同年一〇月二〇日付)(36))、村井義信(44)、富樫源十郎(46)、森柾光(49)、河田和七(50)、杉山広吉(51)、奥村平太郎(52)および岩井金男作成の各「上申書」

一、岐阜県稲葉郡稲羽町収入役(70)および稲羽西農業協同組合組合長(76)作成の各「証明書」

一、中屋郵便局長作成の頭書が「から、、、、」から始まる書面(71)

一、大蔵事務官作成の「個人所得税申告状況調書」と題する書面(72)

一、毛利堅次の大蔵事務官に対する質問てん末書(75)

一、押収してある元帳一冊(自33.6.1至34.5.1)(同押号の一二)(41)および源泉徴収簿一冊(昭和三四年)(同押号の一六)(88)

第三、別紙二(判示第二事業関係)犯則所得貸借対照表の各項目について

(イ)、現金について

一、前年度関係の現金についての前掲各証拠

(ロ)、銀行預金について

一、大垣共立銀行那加支店長作成の同三六年一一月八日付(10および77(豊島国雄名義部分))および同月一〇日付(11)各「預金元帳原本写」

一、岐阜信用金庫切通支店長作成の「定期預金元帳写」(定期預金明細)(12)

一、大垣共立銀行笠松支店長作成の「定期預金元帳写」(定期預金明細)(29)

一、押収してあるノート一冊(A5版のもの)(同押号の九)(37)および預金メモ帳(種田由美で始まりのもの)(同押号の一三)(78)

(ハ)、有価証券について

一、被告人の検察官に対する第二回供述調書(139)

一、第二六回公判調書中の証人真野一郎の供述部分

一、大垣共立銀行那加支店為替係作成の「送金為替手形記入帳原本写」(39)

一、同支店長作成の同日付(表紙に丁番号738と記してあるもの)「預金元帳原本写」中の酒井正男名義部分(66)

一、麒麟麦酒株式会社株式課長(30)、名古屋精糖株式会社株式課長(33)、日本証券代行株式会社名古屋支店(79)、遠州製作株式会社庶務課長(80)および三菱地所株式会社取締役総務部長(81)作成の各「回答書」

一、新三菱重工業株式会社経理部株式課長作成の「回答書送付御案内の件」と題する書面(31)

一、東洋信託銀行株式会社証券代行部作成の頭書が「今般ご照会の、、、、」で始まる書面(32)

一、毛利堅次作成の同年九月二八日付(35)、同年一〇月二〇日付(36)および同年一二月五日付(82)各上申書

一、同人の大蔵事務官に対する質問てん末書(75)

一、押収してあるノート二冊(同押号の九および一〇)

(ニ)、貸付金について

一、被告人の検察官に対する第二回供述調書(139)

一、大垣共立銀行那加支店長作成の同年一一月八日付(表紙に丁番号738と記してあるもの)「預金元帳原本写」中の西山将男(13)および豊島国雄(77)各名義部分

一、同支店作成の手作成の「手形貸付元帳写」(83)

一、毛利堅次作成の同三七年一月二九日付「上申書」(84)

(ホ)、商品について

一、前年度関係の商品についての各証拠

(ヘ)、架空支払手形について

一、前年度関係の架空支払手形についての前掲各証拠

(ト)、架空先日付小切手について

一、被告人の検察官に対する第二回供述調書(139)

一、田中徳光の検察官に対する第一回供述調書(14)

一、大垣共立銀行那加支店長作成の同三六年一一月八日付(表紙に丁番号738と記してあるもの)「預金元帳原本写」中の豊島国雄名義部分(77)

一、押収してある銀行勘定帳(自34.6.1至35.5.31)(同押号の一四)(85)および仕入帳(自34.6 至35.5ア~サ)(同押号の一五)(86)

(チ)、仮受金について

一、前年度関係の仮受金についての前掲各証拠

(リ)、個人仮受金について

一、被告人の検察官に対する第一回ないし第三回各供述調書(138ないし140)

一、第二六回公判調書中の証人真野一郎の供述部分

一、酒井三郎の検察官に対する供述調書(23)

一、大垣共立銀行那加支店長作成の同三六年一一月一〇日付「預金元帳原本写」(11)

一、同支店長作成の同月八日付(表紙に丁番号738と記してあるもの)「預金元帳原本写」中の西山将男(13)、酒井一政(42)、酒井正男(66)、酒井三郎(67)、酒井美節子(68および96)および豊島国雄(77)各名義部分

一、滋賀銀行京都支店次長作成の「普通預金元帳写」(「普通預金宇山安三取引明細写」および「宇山安三名義普通預金中切手、代手の明細」と題する書面)(25)

一、岐阜信用金庫笠松支店次長作成の「定期預金元帳写」(43)

一、株式会社大和銀行京都支店長作成の「普通預金元帳写」(69)

一、滋賀銀行京都支店長代理作成の「定期預金明細」(73)

一、同代理作成の「定期積金」と表題の付してある書面(酒田実名義)(74)

一、大和証券京都支店長作成の「顧客勘定元帳写」(98)

一、麒麟麦酒株式会社株式課長(30)、愛知製鋼株式会社庶務課付西河竜之進(54)、大垣共立銀行庶務課長(55)、関西電力株式会社株式課副長(56)、岐阜土地興業株式会社庶務課長(57)、昭和鉱業株式会社株式課長(58)、十六銀行文書課長代理(59)、中部電力株式会社株式課長(8)、東京電力株式会社株式課(61)、東洋レーヨン株式会社総務部株式課長(62)、名古屋鉄道株式会社株式課長(63)、平和不動産株式会社株式課長(64)、遠州製作株式会社庶務課長(80)、沢藤電機株式会社庶務課長(95)および東洋信託銀行株式会社証券代行部(97)作成の各「回答書」

一、東洋信託銀行株式会社証券代行部作成の頭書が「今般ご照会の、、、、」で始まる書面(32)

一、大和証券株式会社京都支店長作成の「投資信託収益分配金に関する回答」と題する書面(65)

一、杉山広吉(51)、河地清市(92)、河地正吉(93)、五島弘見(94)および中田勝治(99)作成の各「上申書」

一、岐阜県稲葉郡稲羽町収入役(70)および稲羽西農業協同組合組合長(76)作成の各「証明書」

一、中尾郵便局長作成の頭書が「から、、、、」から始まる書面(71)

一、大蔵事務官作成の「個人所得税申告状況調書」と題する書面(72)

一、吉村静の大蔵事務官に対する質問てん末書(91)

一、押収してある源泉徴収簿二冊(同押号の一六および一七)(88および89)および元帳一冊(自34.6.1至33.5.31)(同押号の一八)(90)

第四、別紙三(判示第三事実関係)犯則所得貸借対照表の各項目について

(イ)、現金について

一、前年度関係の現金についての前掲各証拠

(ロ)、銀行預金について

一、被告人の検察官に対する第二回供述調書(139)

一、大垣共立銀行那加支店長作成の同三六年一一月八日付(10および77(豊島国雄名義部分))および同月一〇日付(11)各「預金元帳原本写」

一、岐阜信用金庫切通支店長作成の「定期預金明細」と題する書面(12)

一、大垣共立銀行笠松支店長作成の「定期預金元帳写」(定期預金明細)(29)

一、大垣共立銀行岐阜駅前支店長作成の頭書が「名古屋国税局、、、、」で始まる書面(100)

一、押収してあるノート一冊(預金メモ、A版のもの)(同押号の九)(27)および預金メモ帳一綴(種田由美で始まりのもの)(同押号の一三)(78)

(ハ)、受取手形について

一、被告人の検察官に対する第二回供述調書(139)

一、田中徳光の検察官に対する第一回供述調書(14)

一、大垣共立銀行那加支店長作成の同月八日付(表紙に丁番号738と記してあるもの)「預金元帳原本写」中の豊島国雄(77)、祖父江精一(104)各名義部分および「為替勘定表」(105)

一、押収してある元帳一冊(自35.6.1至36.5.31)(同押号の一九)(109)、試算表一冊(35.7以降)(同押号の二〇)(102)および手形受払帳一冊(36.5月期)(同押号の二一)(103)

(ニ)、有価証券について

一、被告人の検察官に対する第二回供述調書(139)

一、第二六回公判調書中の証人真野一郎の供述部分

一、麒麟麦酒株式会社株式課長(30)、新三菱重工業株式会社経理部株式課長(31)、名古屋精糖株式会社株式課長(33)、日本証券代行株式会社名古屋支店(二通)(79および111)、遠州製作株式会社庶務課長(80)、愛知機械工業株式会社総務部庶務課(106)、大阪窯業株式会社前田正見(107)、株式会社河合楽器製作所秘書課文書係主任(108)、振興造機株式会社株式課長(109)、住友信託銀行株式会社本店証券代行部(110)、日本車輛製造株式会社総務課株式係(112)、三菱信託銀行株式会社証券代行部記帳係(113)、不二越鋼材工業株式会社株式課長(114)および豊和工業株式会社(二通)(115および116)作成の各「回答書」

一、東洋信託銀行株式会社証券代行部作成の頭書が「今般ご照会の、、、、」で始まる書面(32)

一、大商証券株式会社名古屋支店事務部長作成の「上申書」(117)

(ホ)、貸付金について

一、被告人の検察官に対する第二回供述調書(139)

一、大垣共立銀行那加支店長作成の同月八日付(表紙に丁番号738と記してあるもの)「預金元帳原本写」中の西山将男名義部分(13)

一、大垣共立銀行那加支店為替係作成の「送金為手形記入帳」(39)

一、山田洋介作成の書簡(118)

一、国土建設株式会社取締役社長作成の「山田洋介殿弊社建売住宅購入に関する照会回答の件」と題する書面(119)

(ヘ)、架空先日付小切手について

一、酒井三郎の検察官に対する供述調書(23)

一、滋賀銀行京都支店次長作成の「普通預金元帳写」(「普通預金宇山安三取引明細写」および「宇山安三名義普通預金中切手、代手の明細」と題する書面(25)

一、同次長作成の「当座勘定照合表」((2))

一、押収してある銀行勘定帳一冊(自35.6至36.5)(同押号の二二)(120)

(ト)、仮受金について

一、前年度関係の仮受金についての前掲各証拠

(チ)、個人仮受金について

一、被告人の検察官に対する第一回ないし第三回各供述調書(138ないし140)

一、第二七回公判調書中の証人真野一郎の供述部分

一、酒井三郎の検察官に対する供述調書(23)

一、田中徳光の検察官に対する第二回供述調書(45)

一、大垣共立銀行那加支店長作成の同月一〇日付「預金元帳原本写」(11)

一、滋賀銀行京都支店次長作成の「普通預金元帳写」(25)

一、大垣共立銀行那加支店長作成の同月八日付(表紙に丁番号738と記してあるもの)「預金元帳原本写」中の酒井一政(42)、酒井正男(66)、酒井三郎(67)、酒井美節子(68および96)および豊島国雄(77)各名義部分

一、岐阜信用金庫笠松支店次長作成の「定期預金元帳写」(43)

一、株式会社大和銀行京都支店長作成の「普通預金元帳写」(69)

一、滋賀銀行京都支店長代理作成の「定期預金明細」(73)

一、同支店長代理作成の「定期積金」と表題の付してある書面(酒田実名義)(74)

一、麒麟麦酒株式会社株式課長(30)、愛知製鋼株式会社庶務課付西河竜之進(54)、大垣共立銀行庶務課長(55)、関西電力株式会社株式課副長(56)、岐阜土地興業株式会社庶務課長(57)、昭和鉱業株式会社株式課長(58)、十六銀行文書課長代理(59)、中部電力株式会社株式課長(60)、東京電力株式会社株式課(61)、東洋レーヨン株式会社総務部株式課長(62)、名古屋鉄道株式会社株式課長(63)、平和不動産株式会社株式課長(64)、遠州製作株式会社庶務課長(80)、沢藤電機株式会社庶務課長(95)、東洋信託銀行株式会社証券代行部(97)、大阪窯業株式会社前田正見(107)、株式会社河合楽器製作所秘書課文書係主任(108)、住友信託銀行株式会社本店証券代行部(110および123)、日本証券代行株式会社名古屋支店(同三七年二月七日付)(111)、不二越鋼材工業株式会社株式課長(114)、住友信託銀行株式会社本店証券代行部(123)、東洋信託銀行株式会社証券代行部(124)、東洋信託銀行株式会社大阪支店証券代行部(125)、大阪証券代行株式会社代行部管理課(126)、日本証券代行株式会社池田山事務分室(127)、三菱電機株式会社総務部株式課(128)、愛知工業株式会社株式課長(129)、愛知時計電機株式会社取締役社長(130)、株式会社豊田自動織機製作所代表取締役(134)、中部日本放送株式会社取締役総務局長(135)および日本食品化工株式会社取締役総務部長(136)作成の各「回答書」

一、東洋信託銀行株式会社証券代行部作成の頭書が「今般ご照会の、、、、」で始まる書面(32)

一、毛利堅次(三通)(同三六年一〇月二〇日付(36)、同年一二月五日付(82)および同三七年一月二九日付(84))、村井義信(44)、中田勝治(99)、岩井久夫(122)およびカネツ商事株式会社取締役経理部長(137)作成の各「上告書」

一、岐阜県稲葉郡稲羽町収入役作成の「証明書」(70)

一、中尾郵便局長作成の頭書が「から、、、、、」から始まる書面(71)

一、大蔵事務官作成の「個人所得税申告状況調書」と題する書面(72)

一、梶田義道の大蔵事務官に対する質問てん末書(131)

一、押収してある源泉徴収簿(昭和三五年)一冊(同押号の一七)(89)、元帳(自35.6.1至36.5.31)一冊(同押号の一九)(102)および美濃証券(株)関係計算書(36.6.24付)八枚綴(同押号の二三)(133)

第五、争点についての判断

一、同三三年五月三一日現在仮受金(別紙一付表)

同三四年五月三一日終了年度期首において、銀行預金四、三七七万三、二七〇円、棚卸商品一三二万四、二九五円、貸付金三万円、架空支払手形八七万五、八五〇円以上合計四、七五〇万三、四一五円の簿外資産が存在したことは検察官、弁護人双方に争いがない。問題は、この簿外資産に対応する負債科目としての仮受金の数額およびその性格にかかつている。弁護人は同二八年一一月被告会社設立時に存在し、公表上では引継がれなかつた合名会社当時の資産は、検察官認定額を上廻り、かつこれがすべて簿外で被告会社に引継がれ運用されて犯則年度首の簿外資産を構成しているのであるから、引継時以降の運用益を含めて仮受金額を認定すべきであると主張する。

犯則年度首における仮受金の数額は犯則所得には直接かかわりはないが、犯則年度中の利息認定等運用益の帰属に関係するので、次の如く判断する。

(一)、現金一五〇万円の帰属について

被告人は同二七年ころ、独立資金として現金一五〇万円を所持し、以降その現金を被告会社に随時持出使用し回収を繰返したうえ、犯則年度首において手持資金として所持していた、即ち、当該現金は被告人個人に帰属し、したがつて、同額を仮受金として認定すべきであると主張する。被告人は当初被告会社の簿外の金を手持ちしていたものであると供述し(第四回検面調書)、公判廷においてはこれをくつがえして、捜査段階では、自分としては個人の現金である旨の供述をしたのだ、と述べている(第三二回公判廷)が「被告会社設立前に存在した公表外の現金」が事業資金として随時使用されつつ犯則年度首に至つたものであるとしても、その資金につき、被告人個人には当時会社事業を離れて源泉があつたとは認められず、これと現金を手持ちするに至つた経緯を総合すると、直ちに被告人個人に帰属するということはできないが、発生が被告会社設立前であると解すれば仮受金に計上するを相当と認める。

(二)、被告会社設立時の受取手形について

同二八年一一月一一日現在の受取手形につき被告人主張額のうち六八万一、二三四円は弁第一号証ないし第三号証により存在したと認められる。他の申告洩れであつたという三九二万三、七八三円については、弁第四号証および同第一一号証によれば、同日以後取立て入金になつたというのみであつて、前者の手形期間から見れば同日に存在したと推定できる。したがつて、合計一、八六二万五、三八二円の手形のうち一、四七〇万一、六〇七円を割引くことによつて簿外の資金が公表分に流入し、三九二万三、七八三円が簿外のまま存在したと認められる。検察官は右手形は一時点での被告人個人の資金量の証拠とはならないと主張するが、むしろ実質的に被告会社が合名会社の事業をすべて引継いだと見られるので、設立時における受取手形金額はすべて被告会社の仮受金とすることが適切である。

(三)、設立時の簿外商品および同売却益について

被告会社設立時に合名会社より引継いだ簿外商品として検察官が認める三五〇万円のほか被告人は一五〇万円の商品があり更に設立後当該商品の売却益七五万円があり、これは個人分であるから仮受金に計上すべきであると主張する。これは要するに、個人事業にかかるものである(証人酒井三郎の供述)からという趣旨であるが、仮に個人名義の取引があつたとしても、それは個人事業ではなく、会社の簿外取引と解さざるを得ないのであり、また、仮に銀行送金が事実としても(弁第一〇号証)、これが直ちに合名会社解散時の在庫商品の販売代金であることは認め難い。

(四)、定期預金利息について

被告人は被告会社設立時に存在した銀行預金六六〇万九、〇〇〇円およびその後の預金のうち個人帰属分についての利息を個人分とし、仮受金に計上すべきであると主張する。このうち設立時の預金について、検察官は、合名会社と被告人個人にそれぞれいくらが帰属するか区別し得ないので、一応被告人所有と認め、これが被告会社に利用されたと見て、この預金が形式はもちろん実質においてもそのまま五年後の同三三年五月三一日まで引き続いて被告会社に利用されていたと見るのは問題があろうとしながらも、元本合計額の限度において仮受金として認めたとしている。

同三九年八月二四日弁護人提出の定期預金移動明細表によつても、設立時の預金は必ずしも期日とともに書替継続されず、あるいは他と合体され犯則年度首までその同一性を保たず、従つて現存する何れの預金をもつて当初預金の化体したものであるのかを特定できない。被告人もまた、犯則年度首における定期預金は被告会社の裏預金であると認めている(第一回検面調書)。結局、当初においてもその資金源泉を明確に会社事業とは別個の被告人個人に求めることができないのであるから、以降これが形を変えて被告会社資産として管理運用された、即ち定期預金等の資産は被告会社に帰属し、対応額を仮受金として計上するのを相当とする。

更に、被告人に帰属するとは断定しえない債権につき、同族会社としての被告会社と被告人との関係を前提として、その間に何等の消費貸借契約、利息取り極めが存在せず、被告人において利息請求の意思を持たなかつたこと(第一回検面調書)等を考慮すると、利息を認定することはできない。

被告人主張の受取手形割引資金および同利息を元本とする定期預金についても同様である。

(五)、弁護人は、個人に帰属する預金等の資金で割引いた受取手形割引料は貸付金利息として被告人に帰属するものであるから仮受金とすべきであると主張する。簿外の定期預金発生の過程を見ると、合名会社当時から存在した簿外の資金によつて公表分の手形が割引かれ、即ち簿外の資金が手形割引の形をとつて被告会社の公表面へ流入し、手形期日の到来とともにまた裏預金に還流し、即ち受取手形の回収金は徐々に他の簿外資産と混同し、簿外の定期預金を形成したと認められる(前記(二)参照)。そして、手形割引資金自体その源泉は主として合名会社当時からの簿外利益にあると解され、直ちに被告個人に帰属するとは認められないものであるから、かかる形態で持込混同した資産につき、未確定未計上の支払利息を認定し、仮受金として計上することはできない。

なお、弁護人主張の六三九万九、七一二円の貸付利息につき弁第四号証酒井一政名義当座勘定元帳の入出金が手形割引および割引料の実情を真正に表明するものとは断定しえないところであるが、仮にそれが事実でありかつ右割引資金か被告会社設立後も、これとは別個の主体に帰属し運用されていたとしても、終局的にその形態は消滅し定期預金として被告会社簿外資産となつており、従って犯則所得には影響しない。

二、同三四年五月三一日終了事業年度分(別紙一当期増減金額欄)

(一)、現金一五〇万円の帰属について

前記一、(一)と同旨

(二)、有価証券の帰属について

弁護人は酒井美節子名義株式二七万六、七〇〇円は酒井美節子に帰属すると主張する。同株式購入資金は西山将男名義普通預金口座から払出されているが、これについて弁護人は、同預金口座には被告会社の裏預金のほか、被告人等の個人預金が含まれている。従つて問題の株式購入資金が同口座より払出されていても直ちに同株式が被告会社の簿外資産とはならない旨主張するが、同口座に一部個人分資金の入出金が仮にあつたとしても同口座預金が被告会社の裏預金としての性格を失うものではなく個人仮受金の増減をもたらすにすぎない。被告人らの収支についてはすべて個人仮受金の算定根基となつており、かつ酒井美節子自身の収入は極めて僅かであつて同口座より払い出された株式取得資金が仮払金の回収によるものとは認められず、弁護人の主張は理由がない。

(三)、個人仮受金について

1. 貸金回収について

弁護人主張の尾関助夫に対する資金四三万円の回収について、証人尾関春子の証言は曖昧で俄かに措信し難い。また、当座勘定元帳(弁第四号証)による出金および普通預金元帳(弁第九号証)の入金の事実は資金の存在および回収とは直接結びつかず、被告人個人の別途収入もない状況から一歩譲つて仮に貸付および回収の事実があつたとしても、個人による貸付および回収とは認められない。

2. 定期預金利息について

前記一、(四)記載の理由から弁護人主張の定期預金利息二三一万九、〇〇六円の個人仮受計上は認められない。

三、同三三年五月三一日終了事業年度分(別紙二当期増減金額)

(一)、有価証券の帰属について

弁護人主張の酒井美節子名義株式三万四、〇〇〇円については前記二、(二)と同旨により被告会社所有と認める。毛利堅次名義株式三三万七、四〇〇円についても、豊島国雄名義の被告会社簿外預金により購入したものであつて、個人所有とは認められない。

(二)、個人仮受金について

1. 資産売却収入(期中株式売買益)について

弁護人は期中の株式売買益をその主張する個人仮受金総額と当期の被告会社利益金との割合で按分した個人仮受対応額四〇万七、七三〇円は個人仮受金であると主張するが、前記一、(四)、(五)、と同趣旨により認められない。

2. 配当収入について

弁護人は二、(二)および三、(一)の有価証券にかかる配当金一万二、八六〇円が個人に帰属すると主張するが、元本たる株式が被告会社に帰属するのであるから認められない。

3. 定期預金利息収入について

弁護人主張の定期預金利息二六一万〇、二六〇円の個人仮受金増加は前記一、(四)と同趣旨により認められない。

4. 期中銀行預金増加額について

弁護人主張のとおり八九万八、四二三円を正当と認める。

四、同三六年五月三一日終了事業年度分(別紙三当期増減金額欄)

(一)、有価証券の帰属について

弁護人は、酒井美節子名義株式期中増一一二万五、二一〇円は個人に帰属すると主張するが、前記二、(二)と同趣旨により被告会社に帰属するものと認める。架空名義の投資信託二〇〇口一〇〇万円も資金的に見ても、また被告人の供述(第二回検面調書)によっても、被告会社に帰属するものと認められる。

(二)、個人仮受金について

1. 貸金回収について

弁護人は亡信田繁明に対する貸付金五五万円が当期に回収されたと主張するが、前記二、(三)、1.と同様、証人信田義彦の証言から直ちに賃貸および返済の事実があつたとは認められない。また、仮に貸金の回収の事実があつても、貸金の源泉からみてそれは被告会社に帰属するものと解される。

2. 資産売却収入について

弁護人主張のうち三菱地所株式売却収入三四万一、四八七円は前記三、(一)により被告会社に帰属するものであり、株式売買益三三万九、六五四円は前記三、(二)、1.と同趣旨により認められない。

3. 配当収入について

弁護人主張の酒井美節子名義株式配当収入三万七、二八四円は前記三、(二)、2.と同趣旨により認められない。

4. 定期預金利息について

弁護人主張の定期預金利息二四七万八、三三〇円は前記一、(四)と同趣旨により認められない。

(三)、未納事業税について

三、(二)、4.に基づき、未納事業税を次により認定する。

(1) 検察官主張の当期分未納事業税 六六万四、六四〇円

(2) 昭和三五年五月期個入仮受金増加額 二七万一、八四八円

(3) 昭和三五年五月期所得減少額 二七万一、八四八円

(4) (3)に対応する事業税減少額(税率一二%) 三万二、六二〇円

(5) 差引未納事業税((1)-(4)) 六三万二、〇二〇円

第六、結論

以上の結果被告会社の同三四年五月期における所得金額は金一、六七七万七、二七三円、同三五年五月期における所得金額は金六三八万四、七〇四円、同三六年五月期における所得金額は金一、六四一万八、四五一円であるので、同三四年度については、法人税額は金六二七万五、三三〇円で申告納税額は金一二七万七、四六〇円であるから、被告会社は右年度につき正規の法人税額のうち金四九九万七、八七〇円を逋脱したものであり、同三五年度については、法人税額は金二三二万八、一八〇円で申告納税額は金一〇四万八、三六〇円であるから、被告会社は右年度につき正規の法人税額のうち金一二七万七、八二〇円を逋脱したものであり、同三六年度については、法人税額は金六〇三万九、六二〇円で申告納税額は金一四九万二、〇五〇円であるから、被告会社は右年度につき正規の法人税額のうち金四五四万七、五七〇円を逋脱したものである(別紙四法人税額計算書参照)。

(法令の適用)

一、被告会社について。判示第一ないし第三の各事実につき昭和三七年法律第四五号による改正前の法人税法第五一条、第四八条第一項。

二、被告人酒井正男について。判示第一ないし第三の各事実につき昭和三七年法律第四五号による改正前の法人税法第四八条第一項(各懲役刑選択)。刑法第四五条前段、第四七条本文、第一〇条(犯情の最も重い判示第一の罪の刑に加重)、第二五条第一項。

三、被告会社および被告人酒井正男について。昭和三七年法律第四五号附則第一一項、昭和四〇年法律第三四号附則第一九条。

四、訴訟費用について。刑事訴訟法第一八一条第一項本文。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 平谷新五 裁判官 吉田昭 裁判官 古屋紘昭)

別紙一 犯則所得貸借対照表

昭和34年5月31日

〈省略〉

付表

仮受金算出内訳

〈省略〉

別紙二 犯則所得貸借対照表

昭和35年5月31日

〈省略〉

別紙三 犯則所得貸借対照表

昭和36年5月31日

〈省略〉

別紙四 法人税額計算書

〈省略〉

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